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付加言語としての英語を学ぶ子ども達

2016/11/12 3:32 コラム留学情報

付加言語としての英語を学ぶ子ども達

みなさんこんにちは。
今日は本学の教員のコラム、記念すべき第一弾をご紹介します。

「付加言語としての英語を学ぶ子ども達」
”英語を学ぶ前にしっかりと日本語を!” ”知らない言語(英語)が壁になって本来学ぶべきことが学べない、身につかない” など、幼少期の付加言語の習得に関しては様々な懸念が一般社会においては耳にするところかと思います。一方、学問的様々な研究ではこのような”神話”を覆す事実が次々と明らかになってきています。日本国内ではまだまだ広まっていないのも現実としてあるように思います。今回は簡単にではありますが、アメリカのFoundation for Child Developmentというニューヨーク市の公的機関の一種が発表している報告書にあるこれら他言語学習に関する”神話”の中から、日本での文化的背景を鑑みて面白そうなものを2、3ご紹介していきたいと思います。この報告はマサチューセッツ州所在のアメリカ最古の大学と言われるハーバード大学の教育大学院でも教材として紹介されているものです。(以下では、引用にあたって日本の環境に合わせ、「英語を外国語(付加言語)」、「日本語を第一言語(母国語)」として表現を調整するものとします。また、解説には当該文献の概略引用のほか、筆者の知識(他文献)からくるものも含まれます。)

神話1:「幼少期に2言語学ぶことは日本語の習得を惑わせ、妨げる。」
 実際には様々な研究結果から、新生児の時期から2言語を学ぶ能力が人間には備わっていることが明らかになっています。2言語の習得はアルツハイマーの予防になる可能性があることや、単一言語習得とは異なった思考プロセスが行われており、思考力など人間の能力に優位な特性をもたらすと考えられています。

神話2:「日本語を母国語とする話し手は、2言語での教育環境(バイリンガル教育環境)においては勉学及び言語に遅れを経験する可能性がある。」
 これも、神話1と通ずるところもあるかと思います。例えば、アメリカのユタ州で行われている中国語、フランス語やポルトガル語などでの多言語教育プログラムにおいて、その子ども達は州の一般的な学力テスト(共通言語の英語で行われる)においても非常に優秀な結果を出しています。

神話3:「未就学年齢から小学3年生までの時期における100%の英語イマージョン教育は英語を付加言語として学ぶには最適な方法である。」
 英語漬け、そうすれば子供はすぐに慣れる、完璧な英語のネイティブスピーカーになれる、という神話。研究によると、乳幼児期の100%の他言語イマージョン教育には、中長期的な発達を視野に入れると様々なリスクがあることが明らかにされています。家庭、親族、コミュニティでは第一言語(日本語)との関わりは切っても切り離せません。このことからも日本での英語教育には日本語のあり方を問う必要も十分にあります。一方、この時期の他言語の「導入」は、様々な価値のあるものだとも多くの研究が提唱しているのも上にあるように確かです。

余談
 神話1、2は学問的に言えば脳神経科学や心理言語学の基本的研究から見ることができるでしょう。神話3あたりが、応用としてこのような現実を語学に限らずの全人間的な子ども教育の現場でどのように活かしていけるか、小稿の筆者の専門です。英語イマージョン教育という表現もだいぶ耳にするようになってきたかもしれませんね。とは言っても、イマージョン教育にも色々あります。デュアル・イマージョンのように、例えば日本語と英語の2言語での教育もあります。一方、諸研究でもリスクがあると言われる英語100%のイマージョンをとってみても、例えばクラスで、一見、先生が英語のみを媒介に保育や授業を進めているからといって、一概にそれは厳密な意味で英語100%のイマージョン教育であるとも言いがたい場合もあることでしょう。  現代の国際社会では、第二言語の習得は、第一言語や人間の他の様々な能力の発達に有用なことが証明されてきました。一方で、他の様々な人間能力(思考力・判断力など)や第一言語の習得が第二言語習得に及ぼす影響も大きいのです。(詳しくは、本学・専攻科科目「言語教育と幼児教育」で!)
参考文献: https://www.fcd-us.org/ 文責:長谷山康一